職場で話題になったので、確認と備忘録を兼ねてまとめてみました。電験の学習にも役立つ?かもしれないし。
ブレーカーの種類と漏電
漏電とは?
電気回路において、漏れた電流が人体や物体に流れ込むことを「漏電」と呼びます。
この漏れた電流が大きくなると、感電や火災のリスクが高まります。
漏電ブレーカーは、この危険を未然に防ぐための仕組みを持っている重要な機器の一つです。
安全な電気利用の要:漏電ブレーカー
通常、漏電の際に生じる電流(地絡電流)は、一般の負荷電流に比べて非常に小さいため、通常の配線用ブレーカーでは検出が困難なので、専用の「漏電ブレーカー」の登場となります。
3種類ある主なブレーカーとその役割
種類 | 略称 | 役割 |
---|---|---|
サーキットブレーカー (配線用遮断器) | MCB,MCCB | 短絡(ショート)や過負荷による、配線(電線)上の過電流発生からおこる事故を防ぐ |
漏電ブレーカー (漏電用遮断器) | ELB | 漏電による感電事故や、漏電火災を防ぐ 現代は、上記サーキットブレーカーの過電流検出機能も併せ持つ【O.C.付※】製品が主流。 ※Over Current (過電流) |
モーターブレーカー (電動機保護用配線用遮断器) | MMCB | モーター(電動機)負荷の始動および過負荷保護特性に合わせた遮断特性 |
漏電ブレーカーの作動原理
漏電ブレーカーの基本原理
漏電ブレーカーは、通常の電流と漏れた電流の差を検知して作動します。
電流が回路を流れる際に、入力と出力の電流が一致する状態を維持します。
しかし、もし漏れた電流が発生すれば、この一致が崩れ、漏電ブレーカーが作動します。
漏電の例
・圧倒的に多いのが「水気」によるもの。
洗濯機などの家電製品が水が掛かったり、湿気などにより電路に水分が入り込むことで漏電してしまうなど。
・ケーブルなどの老朽化や、圧縮などの力が加わることにより、絶縁被覆が破れたり傷が付いたりして電線があらわになり、ここに水分などが付いたりして漏電してしまうなど。
漏電ブレーカー内部の作動メカニズム
参照)公益社団法人 日本電気技術協会HPより
上図より、電流検出の要となっているのはZCT(零相変流器)。
ZCTは、電流のバランスを測定し、漏電(地絡電流)を検出する機器です。
正常な状態では複数の電流を零相変流器で計測すると、値はゼロになっています。
この値がゼロにならずに許容範囲を超えた電流が流れると、「漏電した」と判断して開閉器が作動します。
具体的には、
漏電が発生すると零相変流器(ZCT)を貫通する電線に流れる電流差Ig(=Il-Ie)に応じてZCTの鉄心にIgによる磁束Φが発生
↓
二次巻線に電圧Vgが誘導される
↓
検出部に現れた電圧Vgを増幅して引外し装置が動作し、開閉機構の引外しが行われ、漏電遮断器が開路
といったメカニズムとなります。
保護協調について
漏電ブレーカーの動作特性は、「感度の違い」と「動作時間」が挙げられます。
区分 | 定格感度電流 | 動作時間 |
---|---|---|
高感度形 | 5,10,15,30[mA] | [高速形] 0.1秒以内 [時延形] 0.1~2秒以内 |
中感度形 | 50,100,200,300,500,1000[mA] | [高速形] 0.1秒以内 [時延形] 0.1~2秒以内 |
低感度形 | 3,5,10,20[A] | [高速形] 0.1秒以内 [時延形] 0.1~2秒以内 |
目的に応じた動作特性を持った漏電ブレーカーを設置するわけです。
その際、電路全体を考えた「保護協調」という考え方が必要になります。(試験にも出てきますね)
参照)公益社団法人 日本電気技術協会HPより
上記の例の図では、ブレーカーの動作時間を考慮して保護協調をとっている例ですね。
A点で地絡(漏電)が発生したときに、電路の上流の方にあるブレーカーまで落ちてしまったら、他の場所まで停電してしまいます。
そこで、下流のブレーカーほど動作時間が短く(NV4は0.1sで動作)、上流のブレーカーほど動作時間に余裕がある(NV3は時延形の0.3s)ことで、漏電による停電の影響を最小限に抑えることができる、というわけです。
まとめ
・漏電電流は値がとても小さいため、専用の漏電ブレーカー(ELB)を使う
・一般家庭で通常使われているのは、過電流と漏電の両方を検出できるタイプ(O.C付ELB)
・検出には、ブレーカー内部のZCT(零相変流器)が活躍している
・漏電ブレーカーの性能も色々あるが、保護協調を考慮して決める必要がある
コメント